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兄妹糸8

 麻が先に部屋に入り電気のスイッチを入れた。それに希恵が続く。
希恵は後ろ手でドアを閉めると、誰も入ってくる筈の無い部屋にさり気なく鍵をかけた。
希恵は麻が出す次の指示をドアの前に突っ立って待っている。
「んじゃ希恵ー、ベッドに座って」
「……うん」
 ぎくしゃくと、歩くのも一苦労だ。ドアからベッドまでの道のりが嫌に長く感じる。
緊張気味に、ちょこんと、そっとベッドに腰掛けた。
「あー、違う違う。もっと奥に座って」
「うん……?」
 ベッドの長い方のサイドは壁に押し付けてあり、隣にはカーテンが閉まっているが窓があった。
少々疑問を抱きながら、希恵は麻の指示に従った。
壁に寄り掛かり、膝を立て両手は脇に置いて座った。
そうすると、麻も希恵と向かい合わせに方膝を立てベッドに座った。
 麻は、恥ずかしがっている希恵の顔をニヤニヤとした表情で覘く。
視線を感じ、希恵は紅潮させた顔を麻に見られないようにと顔を余計に伏せた。
そんな希恵に馬鹿にしたように問う。それも、笑いながら。
「希恵ー? どうしちゃったのー? さっきから、下向いてばっかで」
「……」
「いっつも、ベラベラ喋るのに――なあ?」
「……」
 何故、こうも麻は希恵を甚振るのだろうか。楽しいからなのだろうが。
「んじゃあさ、声。出させてやるよ」
 意味が分からなかった希恵は、麻を見上げた。
その瞬間、麻は顔を希恵の顔に近づけ軽く唇を触れさせた。
離れると同時に、小さく音がした。
 益々高潮する希恵の頬。
しかし恥ずかしがる暇も無く、麻の赤はもう一度希恵の赤に触れた。
 一度目とは違い、深く忍び込むキス。
静かに、しかし確かに希恵の口腔に侵入して行く麻の舌。
 部屋に木霊する水音。
「……んっ」
 思わず希恵は声を漏らした。
その触れ合いは、希恵の上げた一声が終止符を打った。
「声。出たね」
 わざとらしく、爽やかな笑顔を希恵に向けて言う麻。
希恵は、キスの余韻を味わう暇も無く、顔を赤くした。
「なあ、初めて。とか、言わないよな……?」
 不意に麻が希恵に発した台詞。
いつもの馬鹿にしている表情でも無く、困ったような表情でも無く、何とも言えぬ顔で希恵に――問う。

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