麻が先に部屋に入り電気のスイッチを入れた。それに希恵が続く。
希恵は後ろ手でドアを閉めると、誰も入ってくる筈の無い部屋にさり気なく鍵をかけた。
希恵は麻が出す次の指示をドアの前に突っ立って待っている。
「んじゃ希恵ー、ベッドに座って」
「……うん」
ぎくしゃくと、歩くのも一苦労だ。ドアからベッドまでの道のりが嫌に長く感じる。
緊張気味に、ちょこんと、そっとベッドに腰掛けた。
「あー、違う違う。もっと奥に座って」
「うん……?」
ベッドの長い方のサイドは壁に押し付けてあり、隣にはカーテンが閉まっているが窓があった。
少々疑問を抱きながら、希恵は麻の指示に従った。
壁に寄り掛かり、膝を立て両手は脇に置いて座った。
そうすると、麻も希恵と向かい合わせに方膝を立てベッドに座った。
麻は、恥ずかしがっている希恵の顔をニヤニヤとした表情で覘く。
視線を感じ、希恵は紅潮させた顔を麻に見られないようにと顔を余計に伏せた。
そんな希恵に馬鹿にしたように問う。それも、笑いながら。
「希恵ー? どうしちゃったのー? さっきから、下向いてばっかで」
「……」
「いっつも、ベラベラ喋るのに――なあ?」
「……」
何故、こうも麻は希恵を甚振るのだろうか。楽しいからなのだろうが。
「んじゃあさ、声。出させてやるよ」
意味が分からなかった希恵は、麻を見上げた。
その瞬間、麻は顔を希恵の顔に近づけ軽く唇を触れさせた。
離れると同時に、小さく音がした。
益々高潮する希恵の頬。
しかし恥ずかしがる暇も無く、麻の赤はもう一度希恵の赤に触れた。
一度目とは違い、深く忍び込むキス。
静かに、しかし確かに希恵の口腔に侵入して行く麻の舌。
部屋に木霊する水音。
「……んっ」
思わず希恵は声を漏らした。
その触れ合いは、希恵の上げた一声が終止符を打った。
「声。出たね」
わざとらしく、爽やかな笑顔を希恵に向けて言う麻。
希恵は、キスの余韻を味わう暇も無く、顔を赤くした。
「なあ、初めて。とか、言わないよな……?」
不意に麻が希恵に発した台詞。
いつもの馬鹿にしている表情でも無く、困ったような表情でも無く、何とも言えぬ顔で希恵に――問う。
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