「……え? 何で……?」
戸惑った様子で答える希恵。
「ん、まあいいから。で、どうなの?」
「……キスは、初めてじゃない……けど」
「けど?」
「2回目のは、……初めて」
希恵は、伏せ眼がちにぼそぼそと答えた。
麻が今、どんな表情をしているかなど希恵は知る由も無い。
「ふーん。キスした事あんだー。おもしれえ」
「はっ? 何で! あたしだってあるもんっ」
馬鹿にする麻に、向きになって答える希恵。
「ははっ、何でそんな向きになんのー? うけるからっ」
「うけないからっ」
「ま、当たり前か。俺の妹だし。ははっ」
一々向きになる希恵が、麻にとっては面白くて仕方が無い。
「まーとりあえず俺が最初じゃなくて良かったー」
「……何で?」
希恵は麻を睨みながら怪訝そうに問う。
「え? だって、俺が初ちゅーとか笑えない冗談でしょ。俺、お前の兄貴な訳だし。兄妹同士でこんな事する時点でおかしいっつーのに、始めてだったら、まじやば」
何も言わない希恵に、麻が同意を求める様にもう一言付けたした。
「なあ、そう思わね?」
「……うん」
希恵は不本意ながらも仕方なくそう答えた。
「つー事で、キスが初めてじゃないなら、Dキス初めてでもいっかー」
その後も続ける麻の言葉など希恵には全く聞こえず、麻の独り言となって終わった。
希恵は段々、段々自分の身体の熱が、火照りが、引いていくのが分かった。
相変わらず続く、麻の独り言。
「でもさー、妹とキスとか気持ちわりー。って思ってたけど、案外そんなんでもないね。ははっ」
笑って言えてしまう程、麻にとって何気ない、一言。
希恵は妹である事に、つくづく嫌気が差した。
――身体の残りの熱、全てがシーツに吸い込まれていった。
同時に、今まで感じなかった寒さを感じ、体を震わせる希恵。
麻はそれに気付き、心配そうに希恵の身体を摩る。
「希恵? 寒いか? 寒いよなー。何しろ、11月だもんな。しかも、風呂上がったばっかだし。……湯冷めすると、な。お前一応受験生だし。今、エアコン入れるな」
「一応って……」
「は? 何?」
「ううん。何でも無い」
辺りを見回して、ミニテーブルに置いてあったリモコンに身体を乗り出し手に取ると、電源を入れ温度を設定した。
麻が希恵の方を見ていないうちに、そっと希恵は微笑んだ。
どれ程までに傷付いても、この麻の優しさが堪らなく愛しくさせる。
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