「んじゃ、続き」
そう言うと麻は、希恵の後頭部を右手で支え左手で希恵の肩を優しく掴むと、もう一度触れるだけのキスをした。
希恵は、突然の事に眼を瞑ることなく麻を見つめていた。
そのキスから、再び深いものへ――。自然と閉じる希恵の瞼。
希恵の閉じている唇から口腔に忍び込む麻の舌先。
麻の舌先が希恵の舌に、歯列に沿って触れていく。
その度に希恵の体は、ビクリと反応する。麻を感じ取っている証拠かもしれない。
「……ふっ、は……あ」
息の仕方が分からない希恵は、必死にキスの間に空気を仰ぐ。
漸く離れる唇。未だ繋がる透明な糸。
希恵は、眼を逸らして服の袖で口を拭い、その糸を静かに切り離す。
切り離したいのは、こんな糸じゃない。出来るなら――兄妹の糸。
繋がっていたいのは、こんな糸じゃない。出来るなら――運命の赤い糸。
――誰の願い?
希恵はやっと息ができる事で、ホッと吐息を漏らした。
しかし、これで終わる筈も無く、麻の唇から覗く舌が次に捕らえたのは希恵の耳。
静かに希恵の耳を舌先で優しくなぞる。
希恵は擽ったさと恥ずかしさで、顔を捩じらせ妙な息を漏らす。
耳が麻痺してしまうような、そんな感覚。
「……ふ、ふあっ……はっ、ちょっお兄、ちゃ」
そんな希恵を麻は嘲笑うように一瞥して、自らの舌を下へ下へと這わせていく。
口、耳、首筋。次の行き先は、希恵にも何となく予想がついた。
“其処”に近付く程、増す激しい鼓動。それが麻に気付かれてしまわないか、不安で仕方が無かった。
希恵の首筋から、離される麻の口。次の行き先――それは。
しかし、自分が想っている場所へ中々行き着かない事を希恵は不思議に想い、閉じていた眼をそっと開けた。
麻を見ると唯、何処か一点を見つめている。
「ど、うしたの?」
「……お前――」
希恵を見ずにその一点を食い入るように見つめ答える麻の声は、嫌に真剣だった。
「え、何?」
希恵も、そんな麻に合わせ緊張気味に、真剣に答える。
「ブラ、してないよな?」
「う、ん……?」
希恵の頭に浮かび上がる、小さな疑問。
「すっげ、乳首勃ってる」
希恵は拍子抜けし、麻に真剣に応対していた自分が馬鹿馬鹿しく想え、同時に恥ずかしさに駆られた。
「……はあ? 何、突然! 馬鹿! 変態!」
希恵は、興奮と恥ずかしさで顔を真っ赤にして怒った。
「ん、まあね。でも俺は、オープンだけど希恵実はむっつりだし。むっつりの方が変態っぽくね?」
「……」
希恵は悔しいながらも麻の見解に納得し、言い返す言葉が一向に見つからない。
「でも、むっつりでもないか。どっちだろ。ね、希恵?」
希恵は、悔しそうに顔を紅潮させたまま唇を噛み締めた。
今にも泣きだしてしまいそうだ。
「希恵って、楽しいよね」
ケラケラと笑って希恵の頭を軽く叩きながら麻は言った。
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