「だから、希恵はあの女に嫉妬したって言うんでしょ?」
勘のいい麻は、希恵の考えなど直ぐに予想がついた。
「……うん」
「で?」
「え?」
戸惑っている希恵に、呆れたようにため息を吐いて言った。
「だからー、お前は俺を好きだって言って、それで終わりなの?」
「……」
「俺に、気持ち伝えて終わり?」
「……」
「俺に何かして欲しいんじゃないの?」
麻の容赦ない質問攻めの果てに、希恵は小さく、しかし確かに頷いた。
「で?」
「え?」
何度これを繰り返すのか。麻は希恵の反応を見て楽しんでいる。
希恵は、相変わらず戸惑ったままだが。
「だから、俺に何して欲しいの? 俺にどうして欲しいの?」
希恵は答えられず、挙動不審に体をそわそわと動かして、目を泳がせている。
もう一度麻はため息を吐くと、希恵に止めを刺した。
「希恵は、俺がいつも女にしているような事、してほしいんだ?」
先程とは、比べられない程に希恵は顔を紅潮させた。
例えるなら、熟した林檎とでもいおうか。
麻は相変わらず、希恵を馬鹿にした目で笑っている。
「……うん」
「ははっ、そっか」
耐え切れなかったのか、麻は希恵の頭を軽く叩きながら声に出して笑った。
しかし、希恵は益々顔を俯けてしまった。
「希恵ー、俺彼女いるんだよー。女じゃなくて」
「えっ!」
希恵は麻に、不特定多数の女が居るのは嫌でも判っていたが、まさか特定の彼女が居るとは夢にも思わなかった。
それ故、驚いて再び顔を上げた。
――麻の嘘だとも気付かずに。
「そんでもいいの?」
「……うん、いいのっ。お兄ちゃんがそれでも、好きなのっ」
吹っ切れたように、希恵は随分と大胆になった。――顔はまた俯けてしまったが。
その彼女への罪悪感より、麻への重いが勝った瞬間だ。
しかし、彼女が居るだとか居ないだとかの問題ではない。
二人は、兄妹だ。それに、二人は気付いているのか。
――気付いていない? 頭の良い麻でさえも?
「……そ、じゃあ2階行こっか」